「その言い方、実は逆の意味ですよ」と言われたら、冷や汗をかいてしまいますよね。日本語には、多くの人が本来とは違う意味で覚えてしまっている言葉がいくつもあります。文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」でも、こうした言葉は繰り返し話題になってきました。今回は、会話やビジネスメールでうっかり使いがちな7つの言葉を取り上げます。
1. 役不足(やくぶそく)
もっとも有名な「危険ワード」かもしれません。本来の意味は「本人の力量に対して、与えられた役目が軽すぎること」。つまり「あなたには役不足です」は、「あなたほどの実力者にこんな簡単な仕事では申し訳ない」という、相手を持ち上げる言葉なのです。
ところが多くの人は「力不足」、つまり「役目が重すぎて本人の力が足りない」という逆の意味で使っています。謙遜のつもりで「私では役不足ですが…」と言うと、本来は「私にはこんな軽い役目は物足りない」という大変強気な発言になってしまいます。謙遜したいときは「力不足ですが」が正解です。
2. 確信犯(かくしんはん)
「悪いと分かっていながら、わざとやること」の意味で使われがちですが、本来は法律や思想の分野から来た言葉で、「自分の信念に基づいて、正しいことだと確信して行われる行為(犯罪)」を指します。政治的・宗教的な信念からの行動が本来の典型例です。日常会話での「わざとでしょ、確信犯だね」は、厳密には本来の使い方から外れています。
3. 敷居が高い(しきいがたかい)
「高級店で入りにくい」という意味で使われることが非常に多い表現ですが、本来は「相手に不義理や失礼なことをしてしまい、その人の家に行きづらい」という意味です。ずっと連絡をさぼっていた恩師の家を訪ねにくい、というのが本来の使いどころ。「高級すぎて入りにくい」なら「分不相応」「ハードルが高い」などの言い方が近いでしょう。
4. 煮詰まる(につまる)
会議で「議論が煮詰まってきたので休憩しましょう」と言うと、人によって正反対に受け取られる要注意ワードです。本来は、鍋の煮物の水分が減って味が凝縮していくように、「議論が十分に出尽くして、結論の出る段階に近づくこと」。良い意味なのです。「行き詰まる」と混同されて「アイデアが出なくなった」の意味で使われがちですが、本来は逆に「まとまりかけている」状態を指します。
5. 姑息(こそく)
「姑息な手段」と聞くと「卑怯なやり方」を思い浮かべる人が多いのですが、本来の意味は「その場しのぎ、一時の間に合わせ」です。「姑」には「しばらく」、「息」には「休む」という意味があり、根本的な解決を先送りする対応のことを指します。卑怯かどうかは本来関係ありません。
6. 割愛(かつあい)
「時間の都合で説明を割愛します」のように、単なる「省略」の意味で使われますが、本来は「惜しいと思いながら、やむを得ず手放す・省くこと」です。「愛を割く」という字面の通り、そこには「本当は伝えたかった」という未練がこもっています。大事な内容を泣く泣く削るときにこそふさわしい言葉です。
7. 破天荒(はてんこう)
「豪快で型破りな人」のイメージで使われがちですが、本来は「今まで誰も成し得なかったことを初めて成し遂げること」。昔の中国で、長年科挙(官僚試験)の合格者が出ない地方が「天荒(未開の地)」と呼ばれ、初めて合格者が出たときに「天荒を破った」と言われた、という故事に由来するとされています。「前人未到の快挙」がもともとのニュアンスです。
言葉は変わっていくもの、でも知っていると強い
こうした言葉の多くは、誤用とされる使い方が広まりすぎて、辞書に新しい意味として載り始めているものもあります。言葉は生き物なので、「間違い=悪」と目くじらを立てる必要はありません。ただ、本来の意味を知っていれば、相手によって言い方を選べますし、大事な場面での誤解も防げます。「知っていて崩す」のと「知らずに間違える」のとでは大違い、というわけです。
言葉の意味を当てる感覚を毎日ちょっとずつ鍛えたい方は、毎日1問のことわざパズル「ヒトコト推理」もどうぞ。