「その言い方、実は逆の意味ですよ」と言われたら、冷や汗をかいてしまいますよね。日本語には、多くの人が本来とは違う意味で覚えてしまっている言葉がいくつもあります。文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」でも、こうした言葉は繰り返し話題になってきました。今回は、会話やビジネスメールでうっかり使いがちな7つの言葉を取り上げます。

1. 役不足(やくぶそく)

もっとも有名な「危険ワード」かもしれません。本来の意味は「本人の力量に対して、与えられた役目が軽すぎること」。つまり「あなたには役不足です」は、「あなたほどの実力者にこんな簡単な仕事では申し訳ない」という、相手を持ち上げる言葉なのです。

ところが多くの人は「力不足」、つまり「役目が重すぎて本人の力が足りない」という逆の意味で使っています。謙遜のつもりで「私では役不足ですが…」と言うと、本来は「私にはこんな軽い役目は物足りない」という大変強気な発言になってしまいます。謙遜したいときは「力不足ですが」が正解です。文化庁「国語に関する世論調査」(令和6年度)でも、「本人の力量に対して役目が重すぎること」という誤った意味で捉えている人が48.9%、本来の意味で捉えている人が45.1%と、いまも誤用のほうが多数派です。ただし両者の差は4ポイントほどで、ほぼ半々に割れているとも言えます。

2. 確信犯(かくしんはん)

「悪いと分かっていながら、わざとやること」の意味で使われがちですが、本来は法律や思想の分野から来た言葉で、「自分の信念に基づいて、正しいことだと確信して行われる行為(犯罪)」を指します。政治的・宗教的な信念からの行動が本来の典型例です。日常会話での「わざとでしょ、確信犯だね」は、厳密には本来の使い方から外れています。

3. 敷居が高い(しきいがたかい)

「高級店で入りにくい」という意味で使われることが非常に多い表現ですが、本来は「相手に不義理や失礼なことをしてしまい、その人の家に行きづらい」という意味です。ずっと連絡をさぼっていた恩師の家を訪ねにくい、というのが本来の使いどころ。「高級すぎて入りにくい」なら「分不相応」「ハードルが高い」などの言い方が近いでしょう。同じ調査の令和元年度では、本来の意味と答えた人が29.0%、「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」と答えた人が56.4%。この言葉は、誤用とされてきた側が本来の意味の倍近くに達しています。

4. 煮詰まる(につまる)

会議で「議論が煮詰まってきたので休憩しましょう」と言うと、人によって正反対に受け取られる要注意ワードです。本来は、鍋の煮物の水分が減って味が凝縮していくように、「議論が十分に出尽くして、結論の出る段階に近づくこと」。良い意味なのです。「行き詰まる」と混同されて「アイデアが出なくなった」の意味で使われがちですが、本来は逆に「まとまりかけている」状態を指します。平成19年度の同調査では、本来の意味である「結論の出る状態」と答えた人が56.7%、「結論が出せない状態」と答えた人が37.3%でした。

5. 姑息(こそく)

「姑息な手段」と聞くと「卑怯なやり方」を思い浮かべる人が多いのですが、本来の意味は「その場しのぎ、一時の間に合わせ」です。「姑」には「しばらく」、「息」には「休む」という意味があり、根本的な解決を先送りする対応のことを指します。卑怯かどうかは本来関係ありません。令和3年度の同調査では、「ひきょうな」と答えた人が73.9%、本来の「一時しのぎ」と答えた人は17.4%。この記事の7語のなかで、本来の意味がもっとも知られていない言葉です。

6. 割愛(かつあい)

「時間の都合で説明を割愛します」のように、単なる「省略」の意味で使われますが、本来は「惜しいと思いながら、やむを得ず手放す・省くこと」です。「愛を割く」という字面の通り、そこには「本当は伝えたかった」という未練がこもっています。大事な内容を泣く泣く削るときにこそふさわしい言葉です。令和3年度の同調査では、「不必要なものを切り捨てる」と答えた人が65.3%、本来の「惜しいと思うものを手放す」と答えた人は23.7%でした。

7. 破天荒(はてんこう)

「豪快で型破りな人」のイメージで使われがちですが、本来は「今まで誰も成し得なかったことを初めて成し遂げること」。昔の中国で、長年科挙(官僚試験)の合格者が出ない地方が「天荒(未開の地)」と呼ばれ、初めて合格者が出たときに「天荒を破った」と言われた、という故事に由来するとされています。「前人未到の快挙」がもともとのニュアンスです。令和2年度の同調査では、「豪快で大胆な様子」と答えた人が65.4%にのぼり、本来の意味と答えた人は23.3%にとどまりました。

言葉は変わっていくもの、でも知っていると強い

こうした言葉の多くは、誤用とされる使い方が広まりすぎて、辞書に新しい意味として載り始めているものもあります。言葉は生き物なので、「間違い=悪」と目くじらを立てる必要はありません。ただ、本来の意味を知っていれば、相手によって言い方を選べますし、大事な場面での誤解も防げます。「知っていて崩す」のと「知らずに間違える」のとでは大違い、というわけです。


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出典

本文の数値は、文化庁「国語に関する世論調査」のうち、その語をもっとも新しく調べた年度のものです。

  • 文化庁「令和6年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」(問16。「役不足」=「役目が重すぎること」48.9%/「役目が軽すぎること」45.1%。2026年7月31日 確認) bunka.go.jp
  • 文化庁「令和3年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」(問12。「姑息」=「一時しのぎ」17.4%/「ひきょうな」73.9%、「割愛する」=「不必要なものを切り捨てる」65.3%/「惜しいと思うものを手放す」23.7%。2026年7月31日 確認) bunka.go.jp
  • 文化庁「令和2年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」(問10。「破天荒」=「だれも成し得なかったことをすること」23.3%/「豪快で大胆な様子」65.4%。2026年7月31日 確認) bunka.go.jp
  • 文化庁「令和元年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」(問12。「敷居が高い」=「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」29.0%/「高級すぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」56.4%。2026年7月31日 確認) bunka.go.jp
  • 文化庁「平成19年度「国語に関する世論調査」の結果について」(「煮詰まる」=「結論の出る状態」56.7%/「結論が出せない状態」37.3%。この語はその後、再調査されていません。2026年7月31日 確認) bunka.go.jp
  • 文化庁「国語に関する世論調査」(各年度の一覧) bunka.go.jp
  • ※ 文化庁は令和2年度に調査方法を変更しており、令和元年度以前の結果との単純な比較には注意が必要としています。本文でも、年度の異なる数値どうしを「何ポイント増えた/減った」とは比べていません。
  • ※ 「確信犯」の意味・用法は、国語辞典類に広く共通して記載されている範囲の説明にとどめています。同調査で取り上げられた年度は特定できていないため、本文に数値は載せていません。