食欲の秋がやってきました。農林水産省のウェブサイトには、農産物にまつわることわざを集めたページがあります。今回はその中から、秋の味覚にちなむ4つを紹介します。

由来については、よく語られている説と、資料で確かめられることが一致しないものもあります。確かめられた範囲と、確かめられなかった部分を分けて書いていきます。

柿が赤くなると医者が青くなる

農林水産省の解説では、柿を食べると病気にならないという意味で、柿の実を食べるころには病人も減り、医者は仕事がなくなって困ることを表すことわざだとされています。

「一日一個のりんごで医者いらず」の柿版といったところでしょうか。

農林水産省のページは、柿にビタミンCが多いことと、このことわざを結びつけて説明しています。ただし、この説明の歴史的な原典や、ことわざが栄養の知識から生まれたと確認できる資料は、特定できませんでした。ことわざが病気の予防や治療を保証するものでもありません。

栗よりうまい十三里

「十三里」とは、サツマイモのことです。 農林水産省の解説によると、「里」は昔の道のりを計る単位で、1里は約3.9キロにあたります。

農林水産省のページでは、「九里(くり)」と「より(四里)」を足す言葉遊びに加え、江戸・東京から十三里の場所にサツマイモの産地・川越があったためと説明しています。ただし、この由来を同時代の記録で確認できる一次史料は、特定できませんでした。

焼き芋の匂いが漂うこの季節、呼び名の由来を思い出しながら食べると、ひと味違うかもしれません。

豆名月

農林水産省の解説では、昔の暦で9月13日の月をこう呼び、今の暦ではおよそ10月下旬にあたるとされています。

十五夜(中秋の名月)のあとにもう一度めぐってくる月見の機会です。農林水産省のページでは、この月を「栗名月」とも呼ぶと説明しています。一方、十五夜と十三夜の片方だけを見るのは縁起が悪いとされたという話について、こちらでは引用できる一次資料を特定できませんでした。

年に二度、月を見上げる口実がある。それだけでも秋の贅沢だと思います。中秋の名月そのものについては、一葉落ちて天下の秋を知るで今年の日付にも触れています。

米の字の祝い

農林水産省の解説によると、「米」の字を分解すると「八十八」になることから、八十八歳のお祝いを「米寿の祝い」や「米の字の祝い」というのだそうです。

「米」を分けると「八十八」に見えるところから生まれた、覚えやすい長寿祝いの呼び名です。お祝いの席で豆知識として披露すれば、話がひとつ弾むかもしれません。

実りの言葉を味わう

農産物のことわざには、季節の恵みへの感謝と、暮らしの観察が詰まっています。一方で、こうして紹介されている由来も、さらにさかのぼって歴史的な原典まで確かめるとなると、たどりきれないものが少なくありません。分かるところと分からないところを分けておくほうが、言葉としては長持ちするのかもしれません。

スーパーで秋の味覚を選ぶときや、月見団子を用意するときに、今日の言葉をひとつ思い出してみてください。

なお、同じ農林水産省のページに載っている「秋なすは嫁に食わすな」については、蒔かぬ種は生えぬ——実りの秋のことわざで取り上げています。

出典・確認資料(2026年8月21日確認)

  • 農林水産省「農産物の故事・ことわざ」 maff.go.jp — 「柿が赤くなると医者が青くなる」=「柿を食べると病気にならないという意味で、柿の実を食べるころには病人も減り、医者は仕事がなくなってこまるということです。これは、かぜをひきにくくするビタミンCが柿に多く入っているからいわれたのでしょう」/「栗よりうまい十三里」=「『里』とは昔のみちのりを計る単位で、1里は約3.9km。『十三里』とはサツマイモのことです。『クリ(九里)』と『より(四里)』を足すと十三里になりますが、ちょうど、江戸、東京から十三里のところに、サツマイモの産地、埼玉県の川越があったためです」/「豆名月」=「昔の暦で9月13日のお月さまのことをこう呼びます。今の10月下旬です。このほか『栗名月』ともいわれ、このころが豆や栗の『旬』、一番おいしい時期です」/「米の字の祝い」=「米の字を分解すると『八十八』になります。このことから八十八才のお祝いを『米寿の祝い』や、『米の字の祝い』といいます」

柿とビタミンCを結びつける説明、「十三里」の言葉遊びと川越に関する説明、「栗名月」の呼び名は、上記の農林水産省ページに掲載されています。ただし、それぞれの歴史的な原典までは特定できませんでした。また、十五夜と十三夜の片方だけを見ることを縁起が悪いとする説明については、引用できる一次資料を特定できませんでした。

参考にした記事


秋の実りにちなむことわざ、いくつご存じでしたか。毎日1問のことわざパズルことばあてもどうぞ。