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「非常持ち出し袋、そろえなきゃ」と思いながら何年も手つかず。よく聞く話です。中身のリストが長すぎる、そもそも自分に必要なのか分からない。だいたいこの2つが理由です。
持ち出し袋は、何のための袋か
災害が起きたら全員が避難所へ、という前提はもう古い。自宅に倒壊・火災・浸水などの危険がなく引き続き住めるなら、自宅で過ごす「在宅避難」も選択肢です。目黒区も「避難とは『難』を『避ける』ことであり、避難所へ行くことだけが避難ではありません」と説明しています。
つまり持ち出し袋は、自宅から避難するときに最低限必要なものを、すぐ持ち出せるようにまとめた袋です。
ただし、避難が要るかどうかは建物や立地だけで決まりません。避難情報、津波・洪水・土砂災害や火災の危険、建物の被害、家族の健康状態によっても変わります。ハザードマップに加えて、自治体が指定する避難場所と経路、地域の避難情報も確かめておいてください。
家に置く備えが「備蓄」、避難時に持って出るのが「持ち出し品」で、役割は別物です。堺市は持ち出し品を「持って運べるだけの必要最低限にし、リュックサックなど両手が使える袋に入れましょう」と整理しています。
まず何から——水と食料、そして家にあるもの
始めるなら水と食料からです。大阪府は備蓄品の飲料水を「1人一日3ℓを目安に」としており、堺市は最低3日分、できれば1週間分以上の備蓄をすすめています。
ただしこれは家に置く備蓄の話で、避難時に持ち出す量とは別です。持ち出す水・食料は、自治体の案内、避難先までの距離と備蓄状況、家族の事情、そして無理なく運べる重さをもとに決めます。最初から日数や本数を一律に決めず、必要最低限を袋に入れ、残りは自宅の備蓄として分けておきましょう。
残りの品は、まず家にあるものを確認し、足りないものだけを買い足す。この順番だと費用を抑えやすくなります。
中身のリスト
大阪府や消防庁が挙げる品目を、役割ごとに整理します。
1. 命と体を守るもの——飲料水、調理せず食べられる食料(乾パン、栄養補助食品など。量は自治体の案内、避難計画、家族の事情、運べる重さに応じて調整)、常備薬、救急用品、マスク、軍手、ヘルメットや防災ずきん。
2. 行動と情報のためのもの——懐中電灯、携帯ラジオ、予備の乾電池、モバイルバッテリーと充電ケーブル、ホイッスル。
3. 連絡・手続きに必要なもの——現金(公衆電話用の小銭を含む)、緊急連絡先、本人確認や受診に必要なもの。
受診方法は、マイナ保険証を使う方と資格確認書を使う方で異なります。従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終了しているため、厚生労働省や加入先の案内で、いまご自身が何を提示するのかを確かめてください。個人情報を含む書類やカードは、本当に持ち出す必要があるかを確認したうえで、防水と紛失対策をして管理します(暗証番号は書き控えないでください)。
4. 避難先での生活を支えるもの——携帯トイレ、ティッシュ類、タオル、下着と靴下、レジ袋、雨具、保温シート。
重さの目安を示す自治体もあります(大阪府は男性で15kg、女性で10kg程度)。ただし、無理なく背負って避難できる重さは人によって違います。年齢、体格、けがや障害、避難経路で変わるものなので、目安を自分の上限と受け取らないでください。
確かめ方は単純です。靴を履いて実際に背負い、安全な場所を歩いてみる。重ければ減らす。減らした分は家の備蓄に戻せば済みます。
薬は、何をどれだけ持ち出すべきかが体質や病状で変わります。かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください(本記事では個別の助言はできません)。
自分でそろえるなら、家にあるものから
お気づきのとおり、持ち出し袋は手持ちのリュックと、家にあるものから始められます。まず家にあるものを詰め、足りない分だけ買い足す。この順番なら費用を抑えやすくなります。
必要な品と費用は、家族構成、地域、季節、手持ちの品によって変わります。価格だけで選ばず、実際に使えるか、期限や状態に問題がないかも確かめてください。
それでも既製品を選ぶ人がいる理由
一方で、市販の防災セットを選ぶ人もいます。そろえる時間がとれない。何を入れるか考えているうちに始められないまま年が過ぎる。「まず形あるものを家に置きたい」という方には、既製品も選択肢のひとつです。
ただし、買って終わりにはなりません。セットの中身が、あなたの家族に必要なものと一致しているとは限らないからです。乳幼児がいれば粉ミルクやおむつ、持病があれば薬とお薬手帳の控え、高齢の家族がいれば予備の眼鏡、ペットがいればフードとリード。逆に、入っていても不要なものもあります。買ったら一度すべて出して並べ、足すものと抜くものを決める。そこで初めて「わが家の袋」です。
中身の期限を、忘れないために
持ち出し袋の弱点は、置いたまま忘れられることです。見るのは期限だけではありません。電池の液漏れ、モバイルバッテリーの膨らみ、衣類のサイズ、薬の内容、連絡先、季節の用品。家族構成や健康状態、避難先が変わったときも見直しどきです。
無料アプリ「備蓄めぐり」に袋の中身も登録しておけば、家の備蓄と一緒に期限が近い順に並び、開いたときに色分けで状態が分かります。データは端末の中だけに保存されます。定期的に袋を開けるきっかけに。
出典
- 堺市「非常持ち出し品・非常備蓄品」(「最低3日間分、できれば1週間分以上の備蓄をしておきましょう」「非常持ち出し品は、避難するときに持ち出すものです。持って運べるだけの必要最低限にし、リュックサックなど両手が使える袋に入れましょう」と記載) city.sakai.lg.jp
- 大阪府「備蓄品や非常持ち出し品などの準備」(飲料水「1人一日3ℓを目安に」、袋の重さ「男性で15Kg、女性で10kg程度」と記載(Kgの大文字はページの原文どおり)。持ち出し品の品目一覧、家族構成に応じた追加品の記載あり) pref.osaka.lg.jp
- 総務省消防庁「地震などの災害に備えて(防災グッズの紹介)」(印かん・現金・救急箱・懐中電灯・ラジオ・電池・水などの品目を掲載) fdma.go.jp
- 目黒区「在宅避難とその備え」(「避難とは『難』を『避ける』ことであり、避難所へ行くことだけが避難ではありません」と記載) city.meguro.tokyo.jp
- 厚生労働省「資格確認方法について」(「従来の健康保険証の有効期限は、2025年12月1日で終了しています。」「マイナ保険証をお持ちの方は『マイナ保険証』、マイナ保険証をお持ちでない方は『資格確認書』をご提示ください」と記載) mhlw.go.jp
- 内閣府「津波からすぐに逃げよう!」(避難情報や津波からの避難行動について) bousai.go.jp
※ 持ち出す水・食料の日数について、こちらで「1日分で十分」とする一次資料は特定できませんでした。堺市・大阪府の資料が日数を示しているのは家に置く備蓄品であり、持ち出し品については「持って運べるだけの必要最低限」としています。そのため本記事では、持ち出す量を一律の日数では示していません。