災害が起きたとき、家族は同じ家にいても、同じ情報を見ているとは限りません。

内閣府の令和5年版防災白書に、「防災に関する知識や情報を入手するために積極的に活用したいもの」を複数回答で尋ねた世論調査(令和4年)の結果が載っています。全体ではテレビが81.7%で最も高く、ラジオが48.3%、SNS(Twitter、LINE、Facebook等)が36.9%でした。

これは「災害のさなかに実際どれを使ったか」を数えたものではなく、日ごろ活用したい手段を挙げてもらった調査です。ひとりが一つだけ選んだわけでもありません。同白書は、この調査は方法がそれまでと異なるため、過去の結果と単純には比較できないとも断っています。

ところが、これを世代別に見ると景色が変わります。70歳以上ではテレビが91.9%なのに対し、18〜29歳ではSNSが76.6%でテレビ(73.8%)を上回っています。 30〜39歳になるとSNSが70.9%、テレビが71.4%でほぼ並びます。

世代によって、活用したい手段の傾向がはっきり違うということです。この調査は同居する家族を追跡したものではないので断定はできませんが、同じ居間にいる祖父母と孫が、ふだん別の窓から世の中を見ている——ということは、十分ありえます。

「うちのテレビでは言ってない」が起きる

この差は、平時なら趣味の違いで済みます。困るのは、家族の判断が割れたときです。

孫が「SNSで近くの川が危ないと出てる」と言い、祖父母が「テレビでは何も言っていない」と答える。どちらも嘘をついていません。見ている媒体が違うだけです。

そして厄介なことに、この場面ではどちらが正しいかを、その場ですぐには決められません。テレビが遅れているのか、SNSの情報が誤りなのか、判断する材料がないからです。

内閣府は同じ白書で、SNSについて「意図的に、あるいは真偽不明のままに誤った情報が発信されるおそれがある」と指摘し、「デマや誤情報による社会的混乱を防止するとともに、一人一人が注意しながら活用していくことが必要」としています。

SNSを使うな、という話ではありません。速さはSNSの強みです。ただ、速い情報には、確かめられていないものが混ざります。

実際に起きたこと

政府広報オンラインは、令和6年能登半島地震の発災直後の状況をこう記録しています。SNS上では救助を求めたり被害状況を知らせたりする多くの情報が発信された一方で、偽情報や誤情報も流通・拡散し、その結果、救命・救助活動に支障が出るなどの悪影響が生じました。

広める側に悪意があるとは限りません。心配だから、助けになればと思って回す。だからこそ、止めにくいのです。

今日決めておける、三つのこと

情報の真偽を、その場で見分ける魔法はありません。代わりに、あらかじめ決めておけることが三つあります。

1. 家族で「公式の確認先」を複数決めておく

政府広報オンラインは、災害情報は各地域の自治体等の信頼できる複数の情報源で確認するよう案内しています。一つに絞ってしまうと、そこが止まったとき、更新が遅れているとき、扱っている災害の種類が違うときに行き詰まります。

住んでいる市区町村の公式防災ページと公式SNSアカウント、気象庁、テレビ・ラジオ。役割の違うものを複数、家族全員で決めておきます。平時のうちにURLやアカウントが公式のものかを確かめ、ブックマークや受信設定を済ませておくと、当日に探さずに済みます。

そして、確かめている間も避難を遅らせないこと。政府広報は、自治体・消防・警察などの指示があるとき、建物倒壊の危険があるとき、近隣で火災が起きて延焼の危険があるときは、避難所へ避難するとしています。SNSの投稿を突き合わせるのは、安全を確保したあとです。

2. 電池で聞けるラジオを一つ置く

ラジオを挙げた人は48.3%。テレビより低いように見えますが、停電や通信の混雑・障害で、テレビやインターネットが使いにくくなることがあります。乾電池式などの携帯ラジオは、別の経路をもう一本増やす手段です。

どれか一つが必ず生き残る、という保証はどの手段にもありません。だからこそ複数持っておき、予備の電池を確認しておきます。手回し式のものを使うときは、その機器の取扱説明書に従ってください。

3. 「自分は広めない側に回る」と決めておく

政府広報は、情報に接するときの基本として、その情報はどこからいつ発信されたものか、発信者はその分野の専門家か、他ではどう言われているか、添えられた画像は本物か——の四点を確かめるよう呼びかけています。そのうえで、正確性が判断できない場合には安易に投稿・拡散しないことが大切だと案内しています。

見た情報を家族に伝えること自体はかまいません。ただ、そのときは「まだ確かめられていない話だけど」と一言添える。不特定多数に向けて広めるのは、公式のURLやアカウントで確認できたものだけにする。これを先に決めておくと、慌てている最中に迷わずに済みます。

情報も、備蓄のうち

水や食料と違って、情報の備えは目に見えません。だから後回しになります。

けれど、やることは大きくありません。家族で見る場所を決めて、ラジオを一つ置く。どちらも、今日から準備を始められます。

災害が起きてから「どこを見ればいいか」を探し始めると、いちばん見つかりやすいのは、いちばん速く広まっている情報です。それが正しいとは限りません。


出典

  • 内閣府「令和5年版 防災白書」特集1 第2章 第6節 デジタル化等情報伝達手段の変化(図表2-17「防災に関する知識や情報を入手するために積極的に活用したいもの(回答が多かったもの上位5つ・複数回答)」として、テレビ81.7%、ラジオ48.3%、SNS36.9%。18〜29歳はSNS76.6%・テレビ73.8%、30〜39歳はSNS70.9%・テレビ71.4%、70歳以上はテレビ91.9%と記載。令和4年の調査は方法がそれまでと異なるため過去の結果との単純な比較はできない旨も記載。SNSについて「意図的に、あるいは真偽不明のままに誤った情報が発信されるおそれがある」「デマや誤情報による社会的混乱を防止するとともに、一人一人が注意しながら活用していくことが必要」と記載。2026年9月5日 確認) bousai.go.jp
  • 政府広報オンライン「インターネット上の偽情報や誤情報にご注意!」(令和6年能登半島地震の発災直後、SNS上で救助を求める情報等が発信された一方で偽・誤情報も流通・拡散し、救命・救助活動に支障が出るなどの悪影響が生じたと記載。「偽・誤情報に惑わされないための基本のチェックポイント」として「情報源はある?」「発信者はその分野の専門家?」「他ではどう言われている?」「その画像は本物?」の四点を挙げ、情報の正確性が判断できない場合には安易に情報を投稿・拡散しないことが大切と記載。2026年9月5日 確認) gov-online.go.jp
  • 政府広報オンライン「【防災特集】ACTION02 発災時の行動」(「災害情報は、各地域の自治体等の信頼できる複数の情報源で確認してデマに惑わされないようにする」と記載。すぐ避難する場合として、地方自治体・消防・警察などの指示がある、建物倒壊の危険がある、近隣で火災が発生して延焼の危険がある等を挙げている。2026年9月5日 確認) gov-online.go.jp
  • 気象庁「あなたの街の防災情報」(お住まいの地域の警報・注意報や雨雲の様子などを確認できる、気象庁の防災情報ページ。本文で家族の「確認先」の候補として挙げました。2026年9月5日 確認) jma.go.jp