台風が過ぎたあと、雨もりの跡を見つけたら。地震のあと、壁に大きなヒビが入っているのに気づいたら。おそらく多くの人が最初にすることは、濡れたものを外に出し、割れたものを片づけることだと思います。ごく自然な行動ですが、ここに落とし穴があります。

片づけてしまうと、被害がどれくらいだったかを後から証明しにくくなるからです。

ただし、写真より先にすることがあります。

まず、身の安全を確保する

はじめに身の安全を確保し、自治体の避難情報や立入制限に従ってください。倒壊や落下、感電などの危険がある場所には入らないでください。政府広報オンラインも「安全を確保したら、次に行うのは生活の再建です」として、被害の記録や支援の手続きを、安全確保のあとの行動として案内しています。

高いところの撮影も同じです。内閣府の案内には「屋根などの撮影を行う際は転落しないよう十分に気を付けること」とあり、自分で撮影できない箇所は修理業者などに撮影を依頼するよう示されています。写真のために危険な場所へ近づかない。ここを外さないでください。

そのうえで、安全を確保できた範囲で、片づけや修理の前に被害を撮影します。

罹災証明書が必要になる場面

罹災証明書は、地震や風水害などで被災した住家の被害程度を、区市町村が調査して証明する書類です。東京都防災ホームページでは「地震や風水害等の災害により被災した住家の被害について区市町村が被害認定調査を行い、確認した被害程度について、区市町村長が交付する証明書」と説明されており、住家被害認定調査 → 罹災証明書の交付 → 各種の生活再建支援、という流れが示されています。

被災者生活再建支援金、義援金、税や保険料の減免といった手続きで必要になる場合があります。ただし、すべての支援がこの証明書を入口にしているわけではありません。京都市は「公的な被災者支援制度などを利用する際に、必要となる場合があります」という書き方をしており、民間保険会社への保険金請求については「り災証明書は基本的に不要です」と案内しています。対象になる制度や条件は、災害と自治体によって異なります。使いたい制度と、お住まいの市区町村の案内を確認してください。

なお被害の程度そのものは、内閣府(防災担当)の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」などの共通の基準に沿って判定されることになっています。

だから「写真」が効いてくる

被害認定調査では、自治体の職員が実際に住まいを見に来ることがあります。ただ、大きな災害のあとは調査を待つ家がたくさんあり、その間に危険な箇所を直したり、水に浸かったものを処分したりする必要も出てきます。

そこで役に立つのが、被災直後に撮った写真です。栃木市は「住まいが被災したら、まず写真を撮りましょう」として、写真が「被害程度の判定の根拠となり、より正確かつ迅速な調査につながります」と案内しています。撮るタイミングは、雨もりや浸水、ヒビ割れなどの被害を見つけたらすぐ、とされています。

撮り方の目安も具体的です。

  • 建物の外は、なるべく四方向から撮る
  • 浸水したときは、水がきた高さがわかるように撮る(メジャーをあてる、大きさを比較できるものと一緒に写すなど)
  • 建物の中は、部屋ごとの全体写真と、被害箇所に寄った写真の両方を撮る

全体写真と寄りの写真をセットにするのは、「家のどこの、何が、どう壊れているか」が一枚では伝わりにくいからです。スマートフォンで構いません。撮影日がわかる設定にしておき、外観・部屋・被害箇所の対応がわかるように整理して保存します。京都市は、データで提出するときに「北面・基礎のひび割れ」のように被害箇所がわかるファイル名にするよう案内しています。提出の方法や、添付できるファイルの容量は市区町村の案内を確認してください。

写真は、保険会社へ被害状況を説明するときにも役立つ場合があります。ただし前に書いたとおり、保険金の請求に罹災証明書が必要とは限らないので、手続きは契約先へご確認ください。

申請の方法は、自治体と災害で違う

申請先、窓口かオンラインかといった申請方法、現地調査の有無、受付期限、必要書類は、災害と市区町村によって異なります。被災した建物がある市区町村の最新の案内を、早めに確認してください。ここでは京都市の例を挙げます。

京都市防災ポータルサイトでは、区役所・支所の窓口のほか、マイナポータルを使った電子申請も案内されています。提出するものとして挙げられているのは、申請書、被害状況のわかる写真(後述の「自己判定方式」で判定する場合は必須、その他の場合も可能な限り添付)、被災した住家の図面(あれば。なければ手書きの間取り図等)、本人確認書類、代理人が申請する場合は委任状です。

同じページでは、名前の似た二つの証明書の違いも説明されています。京都市の例では、住家の被害は「り災証明書」、非住家の被害は「被災証明書」と区分されています。名称や対象、火災のときの受付先は自治体によって異なるので、被災した建物がある市区町村や消防署の案内をご確認ください。

また京都市には「自己判定方式」という仕組みがあり、被害が「準半壊に至らない(一部損壊)」程度に軽微な場合には、被災した人が撮影した写真などから判定して現地調査を省略できるとされています。この方式を使う場合、写真は必須です。ここでも、最初に撮っておいたかどうかが効いてきます。

平時にできること

罹災証明書は、必要になるときが来ないのがいちばんです。それでも、平時にできる準備がひとつだけあります。

「安全を確かめてから、片づける前に写真」。この順番を、家族の間で共有しておくことです。

災害の直後は気が動転しますし、目の前の片づけに追われます。そのときに「そういえば写真」と思い出せるかどうかは、事前に一度でも聞いたことがあるかどうかで変わります。ハザードマップを見ておくことや、備蓄を整えることと並べて、頭の片隅に置いておいていただければと思います。


出典

  • 政府広報オンライン「防災特集 ACTION03 被災時の行動」(安全確保後の行動として被害の記録・支援手続きが案内されていることを確認、2026-09-06確認) gov-online.go.jp
  • 内閣府「災害により住宅に被害を受けた方へ重要なお知らせです。」(屋根などの撮影時の転落注意と、撮影できない箇所の業者依頼を確認、2026-09-06確認) bousai.go.jp
  • 東京都防災ホームページ「災害時における被災者生活再建支援」(罹災証明書の定義と支援までの流れを確認、2026-09-06確認) bousai.metro.tokyo.lg.jp
  • 栃木市「住まいが被災したら、まず写真を撮りましょう」(写真の役割と撮り方を確認、2026-09-06確認) city.tochigi.lg.jp
  • 京都市防災ポータルサイト「り災証明書・被災証明書について」(申請方法・必要書類・自己判定方式・保険金請求の扱いを確認、2026-09-06確認) bousai.city.kyoto.lg.jp
  • 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定」(被害認定の共通基準の所在を確認、2026-09-06確認) bousai.go.jp