きょう2026年8月7日は「立秋(りっしゅう)」。暦の上では今日から秋です。……と聞いて、「この猛暑のどこが秋だ」と思ったあなた。ごもっともです。でも、この「暦の上では」という言葉の仕組みを知ると、季節の挨拶が一気に使いこなせるようになります。今日はことわざをひと休みして、暦の言葉の話です。
立秋とは何か——二十四節気の仕組み
立秋は「二十四節気(にじゅうしせっき)」のひとつ。二十四節気とは、太陽の通り道を24等分して季節の目印にした、古代中国生まれのカレンダーです。春分・夏至・秋分・冬至といったおなじみの言葉も、この仲間。立秋は太陽の位置(黄経135度)で決まるため、年によって日付が少し動き、毎年8月7日ごろになります。
「秋が立つ」と書くのは、この日から秋の気配が立ち始める、という意味。二十四節気では、立秋は秋の始まりを示す節気です。ただし、これは気温がその日から急に下がるという意味ではありません。むしろ体感的には一年で最も暑い時期。だからこそ、この後の暑さは「残る暑さ」、すなわち「残暑」と呼ばれるわけです。
暑中見舞いは昨日まで、今日からは残暑見舞い
季節の挨拶状には、はっきりした切り替えルールがあります。
- 暑中見舞い: 小暑(7月7日ごろ)〜立秋の前日までに届くように送る
- 残暑見舞い: 立秋(今年は8月7日)〜8月末ごろまでに届くように送る(遅くとも「処暑の候」=9月7日ごろまでが目安)
つまり今日以降に出すなら「残暑お見舞い申し上げます」が正解です。ポイントは投函日ではなく相手に届く日で考えること。「まだ暑いのだから暑中でいいのでは」と思いたくなりますが、この挨拶は体感温度ではなく暦に従うのが約束事。「立秋とは名ばかりの厳しい暑さが続いておりますが」という定番の書き出しは、暦と体感のずれをそのまま挨拶に変えた、先人の見事な発明です。
「暦の上では」を使いこなす
ニュースでよく聞く「暦の上では秋となりました」という言い回し。これは「二十四節気では」という意味で使われる、便利な言い回しです。逆に言えば、立秋を知っていると、季節の挨拶の引き出しが増えます。
- 立秋の前日までの猛暑 → 「大暑のみぎり」「暑さ厳しき折」
- 立秋以降の猛暑 → 「残暑厳しき折」「秋暑の候」
同じ35度の日でも、暦の位置で言葉が変わる。この使い分けができると、メールの冒頭一行がぐっと大人になります。
秋はどこから来るのか
『古今和歌集』には、藤原敏行の「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」という歌があります(巻第四・秋歌上・169番)。秋が来たと目にははっきり見えないけれど、風の音にはっと気づかされた——という意味で、立秋のころの感覚を千年以上前に言い当てた歌として知られています。地域や年によって差はありますが、夕方の風や少しずつ早まる日暮れなどに、秋の気配を感じることもあります。「暦の上では秋」とは、その小さな変化を探すための合図なのかもしれません。
今日からの挨拶をアップデート
というわけで、本日からは残暑見舞い、書き出しは「残暑お見舞い申し上げます」。締めくくりには「まだまだ暑さが続きます、どうぞご自愛ください」を。なお「ご自愛ください」は「お体を大切に」の意味なので、「お体をご自愛ください」と書くと意味が重複してしまう点も、あわせて覚えておくと安心です。暦の言葉は、知っているだけで季節の解像度を上げてくれます。
季節のことばに強くなったら、毎日1問のことわざパズル「ことばあて」にも挑戦してみてください。