9月は新学期がはじまり、新しい目標に向かって一歩を踏み出す人も多い季節です。今回は、そんなときにそっと背中を押してくれる「学びと努力」にまつわることわざを5つ紹介します。
石の上にも三年
冷たい石も三年座り続ければ温まる、という意味から、辛抱強く続けることの大切さを表すたとえです。由来については諸説が語られていますが、確かなことは分かっていません。すぐに結果が出ないときほど、思い出したい言葉です。
七転び八起き
七回転んでも八回目には起き上がる、という意味で、何度失敗してもあきらめずに立ち上がることを表します。「七」や「八」は実際の回数というより、失敗の多さと、それを上回る立ち直りの強さを強調する表現とされています。
塵も積もれば山となる
一粒一粒はごくわずかな塵でも、積み重なれば山になるということから、小さな努力の積み重ねがやがて大きな成果につながるという意味で使われます。地道な勉強や練習の価値を語るときによく引き合いに出されることわざです。
学問に王道なし
学問を修めるのに特別な近道はない、という意味です。古代ギリシャの数学者ユークリッドが王に「幾何学に王道なし」と答えたという逸話と結び付けて紹介されますが、今回、その成立を確認できる一次資料は特定できませんでした。 日本のことわざではなく西洋由来の言葉とされ、日本でも広く使われています。
少年老い易く学成り難し
少年はあっという間に年をとってしまうが、学問はなかなか成就しない、という意味です。時間を惜しんで学ぶことの大切さを説いた言葉で、「偶成」という漢詩の一節として知られています。
長く中国南宋の学者・朱熹(しゅき)の作として広まりましたが、国立国会図書館のレファレンス事例は、朱熹の作ではなく日本の室町時代の禅僧によるものとする研究(『朱子絶句全譯注』1991年など)や、作者を観中中諦(かんちゅうちゅうたい)ではないかと検討する論文(2005年)を紹介しています。作者は確定したものとして扱わず、「朱熹の作ではないとする研究がある」と理解するのが安全です。よく知られた言葉ほど、その出どころが後から見直されることもある、という一例です。
声をかけるときの、ちょっとした工夫
こうしたことわざは、伝え方しだいで受け取られ方が変わります。うまくいっていない相手にいきなり「石の上にも三年だよ」と言うと、今のつらさを軽く扱われたように聞こえることがあります。
おすすめは、言葉より先に、今やっていることを具体的にひとつ認めることです。「毎朝続けているね」と伝えたうえで「塵も積もれば、って言うしね」と添えると、励ましが押しつけになりにくくなります。
自分に向けて使うなら、紙に書いて目に入る場所に貼っておくのも手です。うまくいかない日にふと目に入ると、続けること自体が今日の成果だったと思い直せます。ことわざは、答えを出す道具ではなく、立ち止まったときに視点を少し動かしてくれるものだと考えると、気楽に付き合えます。
どのことわざも、結果がすぐに出なくても歩みを止めないことの大切さを教えてくれます。新学期を迎えるお子さんや、新しいことに挑戦する自分自身に、ひとこと添えてみてはいかがでしょうか。
出典
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「"少年老い易く 学成り難し"という漢文の由来について確認したいことがある。」(事例ID 1000032373。『朱子絶句全譯注』第1冊〈宋元文學研究會編、汲古書院、1991〉p.6 の「この詩は實は彼の作ではなく、わが室町時代、禪僧の手になるものであることがほぼ立證された」、および「この詩を朱子の作と見るのはやはり無理があるようである」を引用。典拠は柳瀬喜代志「いわゆる朱子の「少年老い易く學成り難し」(「偶成」詩)考」〈『文學』1989年2月號、岩波書店〉。2026年8月26日 確認) https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&id=1000032373
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「塵が積もり続けて山になった事例はあるか、あったとして何年掛かったものと推定されているか。」(事例ID 1000296554。『岩波ことわざ辞典』により「塵も積もれば山となる」の意味を確認。2026年8月25日 確認) https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000296554&page=ref_view
※ 「石の上にも三年」「七転び八起き」「学問に王道なし」の由来については、確認できた範囲では一次資料を特定できませんでした。本文でも断定を避けています。