備蓄というと、まず食べ物と水が思い浮かびます。棚に非常食が並んでいれば、ひとまず安心という気持ちになります。
けれど、食べ物と水を備えていても、停電やガスの停止で温める手段を失うことがあります。停電すれば電子レンジもIHも止まります。都市ガスが止まれば、コンロも使えません。カセットこんろとボンベがあれば、湯を沸かし、食べられる食品の選択肢を広げられます。お湯があれば、湯せんが必要な食品や、カップ麺、フリーズドライ食品など、選べるものが増えます。
そこで頼りになるのがカセットこんろですが、問題は、ボンベが何本あれば足りるのかが、なかなか分からないことです。
目安は「1人1週間で約6本」
農林水産省は「災害時に備えた食品ストックガイド」のなかで、熱源の確保について、カセットボンベは1人1週間あたり約6本を備蓄の目安として示しています。
ここで気をつけたいのが、この6本は「1人あたり」の目安だということです。4人家族なら単純に掛けて約24本。ただし、これは当サイトが掛け算した数字であって、農林水産省が「4人家族なら24本」と示しているわけではありません。
そして実際には、そこまで必要にならない家庭が多いはずです。鍋ひとつで4人分の汁物を作っても、1人分を4回に分けて作るのに比べれば、ガスの減りは少なくて済みます。人数が増えても、使うガスはそのまま比例して増えるわけではない、ということです。
とはいえ、少なく見積もりすぎると、いざというときに温かいものが作れません。24本は「これだけあれば、まず困らない」という多めの目安と考えて、そこから自分の家に合わせて調整するのが現実的です。3本パックなら8つ分。置き場所を考えると、まずは半分の12本を目標にして、少しずつ足していく形でもよいでしょう。
自分の家の適量を知る、いちばん確かな方法もあります。ふだんの食事を一度カセットこんろで作ってみて、1本でどれくらいもつかを見ておくことです。消費量はこんろの機種・火力・気温・調理内容で変わるので、数字を覚えるより、自分の家の感覚をつかんでおくほうが役に立ちます。
見落としがちな「使用期限の目安」
同じガイドは、使用期限の目安として、ボンベは約7年、コンロは約10年を挙げています。
缶詰や水の期限は気にしても、ボンベの製造年月を見たことがある人は多くないはずです。押し入れの奥に10年前のボンベが眠っていた、という話は珍しくありません。ボンベは「置いておけばいつまでも使えるもの」ではない、と覚えておいてください。
こんろ本体にも買い替えの目安があります。NITE(製品評価技術基盤機構)は、カセットボンベやこんろには気密性を保つОリングやパッキンと呼ばれる部品が使われており、時間の経過とともに劣化(硬化してひび割れ)して、使用時にガス漏れなどが生じるおそれがあると注意しています。同機構は「食品に消費期限があるのと同様に、カセットボンベ等についても使用期限があります」と書き、その目安をボンベは7年、こんろは10年としています。メーカーの表示がある場合は、それに従ってください。
事故の約4割は、誤った使い方から
製品評価技術基盤機構(NITE)は、2024年12月に注意喚起を出しています。
2014年度から2023年度までの10年間にカセットこんろの事故は91件ありました。
そのうち調査が完了した86件では、
使用者の誤使用・不注意が推定されるものが約4割となっています
NITEが挙げる、事故を防ぐ3つのポイントはこうです。
①カセットこんろにカセットボンベを確実にセットする。②カセットこんろを正しく使う。③カセットボンベはカセットこんろから取り外して、室内の40℃未満の場所に保管する。
同機構は、保管について「40℃以上の高温下や熱源のそばには放置しない」としています。
災害時は、ふだんと違う使い方をしがちです。こんろを覆うような大きな鍋や鉄板を使う、こんろを2台以上並べて使う——こうした使い方はボンベを過熱し、破裂につながるおそれがあります。NITEは「カセットこんろを2台以上並べて使用しない」と明記しています。同機構が挙げている実際の事故では、屋外でこんろを2台並べ、一方のごとくを裏返して比較的大きな鉄板で調理したため、ボンベが過熱して破裂し、6名がやけどを負っています。非常時こそ、取扱説明書どおりに使う。それがいちばんの備えです。
換気と、使ってはいけない場所
災害時にいちばん見落とされやすいのが、使う場所です。
カセットこんろは、取扱説明書に従い、十分に換気できる場所で使います。閉め切った室内では酸欠や一酸化炭素中毒のおそれがあります。NITEは避難先を名指しして、「避難先としてのテント内や車内など、狭い場所でカセットこんろを使用しないでください」と注意しています。理由は2つあります。周囲の可燃物に着火して火災になるおそれがあること、そして狭い場所では不完全燃焼して一酸化炭素(CO)中毒に至るおそれがあることです。
周囲の可燃物からは必要な距離を取り、使用中はその場を離れないでください。
今日できること
- 家にあるボンベの本数を数える。「1人約6本(1週間分)× 人数」を多めの目安として、自分の家の食事のしかたと照らし合わせる
- ボンベ底面などの製造年月日と、容器・メーカーの表示を確認する。製造から約7年以内を目安に使い切り、メーカーの表示がある場合はそれに従う
- 製造日が分からない、期限を過ぎている、さび・変形があるなど安全を確認できないボンベは点火せず、メーカーやカセットボンベお客様センター、自治体の案内に従って処理する
- こんろとボンベを、コンロ脇やストーブのそばに置いていないか確かめる
- 取扱説明書、こんろの製造年、指定ボンベ、ボンベの製造年月日、さび・変形の有無を確認する。安全を確認できた器具だけを、十分に換気できる場所で通常の調理に使い、古いものから使って買い足す(ローリングストック)。異常やガス臭があれば点火せず、使用を中止する
食べ物と水をそろえたら、次は熱源です。温かい汁物が一杯あるだけで、避難生活の心細さはずいぶん違います。そのための備えが、ボンベ数本を棚に足しておくことだとすれば、先に手をつけておく価値はあるはずです。
出典
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」熱源を確保しよう 災害時に備えた食品ストックガイド
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「“NO MORE ボンベ破裂”~約4割が誤使用・不注意 「カセットこんろの事故」を防ぐ3つのポイント~」(2024年12月26日。事故91件・調査完了86件・誤使用等が約4割、「カセットこんろを2台以上並べて使用しない」、「カセットボンベはカセットこんろから取り外して、室内の40℃未満の場所に保管する」。2026年8月25日 確認) “NO MORE ボンベ…カセットこんろの事故」
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「備えただけでは、憂いあり~ライフライン停止時に活躍する製品で気を付けるポイント~」(2025年8月28日。Оリング・パッキンの経年劣化でガス漏れが生じるおそれ、「食品に消費期限があるのと同様に、カセットボンベ等についても使用期限があります」、使用期限の目安はボンベ7年・こんろ10年、「避難先としてのテント内や車内など、狭い場所でカセットこんろを使用しないでください」「周囲の可燃物に着火して火災になるおそれがあります」「狭い場所で使用すると、不完全燃焼して一酸化炭素(CO)中毒に至るおそれがあり大変危険です」。2026年9月18日 確認) 備えただけでは、憂いあり…で気を付けるポイント~