大雨のあと、道路に水がたまっている場面に出くわすことがあります。前の車が通れているし、そんなに深くも見えない。そう思って進入した車が動けなくなる——アンダーパスなどの低い場所では、冠水による車両水没の被害が繰り返し起きています。

車は水に強そうに見えます。しかし実験の結果を知ると、印象がかなり変わります。

全国に約3,700か所ある「水がたまる道路」

国土交通省によると、市街地には前後の区間より急に低くなっている区間があり、これを「アンダーパス」と呼びます。全国に約3,700か所(令和7年3月末時点)あるとされています。

アンダーパスでは、排水ポンプや情報板、事前の通行規制といった冠水対策が行われています。ただし、排水能力を超える大雨になると水がたまることがあります。国土交通省は、排水能力を超える雨のときに事前の通行規制を行い、情報板などで道路利用者に知らせています。

問題は、低い場所なので、手前からは水深が分かりにくいことです。走ってきた勢いのまま入ってしまいます。

実験で30cmを走れても、実際の道路の安全基準にはならない

JAF(日本自動車連盟)が、水深を変えて冠水路を走る実験を行っています。ただし、これは進入してよい水深を示す基準ではありません。試験車両も試験場も限られた条件のものです。

JAFの試験条件での結果は、次のとおりでした(2010年4月8日実施。セダンはトヨタ・マークⅡ、SUVは日産・エクストレイル。アンダーパスを想定した、水平部分30mのコース)。

  • 水深30cm:セダンもSUVも、時速10km・30kmとも走りきれた
  • 水深60cm:セダンは時速10kmでも走りきれず、31m地点でエンジンが止まった
  • 水深60cm:エンジン位置の高いSUVは、時速10kmなら走りきれた

同じ30cmでも、時速30kmでは巻き上げる水が多くなり、エンジンルームに多量の水が入ったことも分かっています。ただし、速度を落とせば安全に通れる、ということではありません。この試験結果を、進入してよいかどうかの判断に使わないでください。

繰り返しますが、これは試験場での検証です。実際の道路では水深、流れ、段差やマンホールの外れ、車種や車両の状態が異なります。水がたまった道路には入らず、迂回してください。JAF自身も、安易に冠水路には入らないよう案内しています。

いちばん怖いのは、止まったあと

エンジンが止まっても、車から出れば済む——とは限りません。JAFは、水深別にドアが開くかどうかも調べています。

セダンでは水深60cmから、ミニバンでは90cmから後輪が浮き始めました。そして後輪が浮いている状態では、外から強い水圧がかかり、セダンもミニバンもドアを開けられませんでした。開けられるようになったのは、車が完全に水没して車内外の水位差が小さくなってからです。車外からドアを開けるのも難しくなる場合があるとされています。

これは、完全に水没するまで車内で待つという意味ではありません。脱出が遅れた最終局面で何が起きるかを示した結果であって、待機を勧めるものではありません。

万一、車が水没し始めたら、早い段階でシートベルトを外して脱出を試みます。JAFは、車両が前傾して浮いている場合には、後席のドアなど水圧の影響を受けにくいドアから脱出を試みるよう案内しています。

そして、ドアも窓も開かない場合に備えて、脱出用ハンマーを運転席から手の届く場所に固定しておくこと。荷室やトランクに積んでいては、いざというときに手が届きません。平時に置き場所と使い方を家族で確認しておきましょう。なお、一部の車種はドア(サイド)ガラスにも合わせガラスが使われており、ハンマーで割れない場合があるとJAFは注意を促しています。どの窓でも必ず割れるとは限りません。

だからこそ、冠水路へ入らないことが最優先です。

引き返す、という判断

こうした結果を踏まえると、対策はひとつに絞られます。水がたまった道路には入らない。

  • アンダーパスや線路の下をくぐる道は、大雨のときは避けて通る
  • 通行止めや情報板の表示に従う
  • 深さが分からない水たまりは、通れる前提で近づかない
  • 前の車が通れたことは、自分の車が通れる理由になりません

遠回りに時間がかかっても、安全を優先してください。判断に迷ったら、冠水路へ進まず引き返しましょう。

日ごろの備えとしては、通勤路や送り迎えのルートに低い場所がないかを、雨の降っていない日に一度確認しておくと役に立ちます。道路管理者や自治体が、冠水注意箇所や通行規制の情報を公表している地域もあります。平時に、自宅周辺と普段の経路について公式サイトで確認しておきましょう。見ておくだけで、雨の日に通る道の選び方が変わります。


出典

  • 国土交通省「道路の冠水対策」(アンダーパスは全国に約3,700箇所〈R7.3末時点〉/排水能力を超える雨の際の事前通行規制と情報提供。2026年9月2日 確認) mlit.go.jp
  • JAF「冠水路走行テスト(JAFユーザーテスト)」(2010年4月8日実施。試験車両はトヨタ・マークⅡ〈セダン・2,000cc〉と日産・エクストレイル〈SUV・2,000cc〉、アンダーパスを想定した水平部分30mのコース。水深30cmは走行可/水深60cmではセダンは時速10kmでも31m地点でエンジン停止、SUVは走行可/同じ30cmでも時速30kmではエンジンルームに多量の水。2026年9月2日 確認) jaf.or.jp
  • JAF「水深何cmまでドアは開くのか?(JAFユーザーテスト)」(セダンは水深60cm、ミニバンは90cmから後輪が浮き始めた/後輪が浮いている状態では水圧でドアが開けられなかった/完全に水没すると車内外の水位差が小さくなり開けられた。まとめとして「車両が前傾して浮いている場合、後席のドアなど水圧の影響を受けにくいドアから脱出を試みる」「安易に冠水路には入らない」「脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切」「一部車種のドア(サイド)ガラスは、フロントガラスと同様に合わせガラスを採用しているため、割れない場合があります」と記載。2026年9月2日 確認) jaf.or.jp