家庭備蓄の話は、たいてい「何人分を、何日分」という数の話になります。水は1日3リットル、食料は最低3日分から1週間分。こちらの記事でも、その考え方で書いてきました。

ただ、家族に食物アレルギーのある方がいる場合、量の前に「中身」の問題が来ます。そして、そこだけは他の家庭の備蓄リストを借りてくることができません。

災害後に買い足せるとは限りません

農林水産省は、はっきりこう書いています。

災害等が起こると、食物アレルギー対応食品を含む特殊食品は手に入りにくくなります。

ふだんスーパーに並んでいる「卵・乳不使用」の食品は、もともと種類も置いている店も限られています。災害で物流や店舗の営業に支障が出ると、ふだん食べているアレルギー対応食品が手に入りにくくなるおそれがあります。災害後に買い足すことだけを当てにせず、家庭で備えておくことが大切です。

そのため農林水産省は、食事に配慮が必要な方について、少なくとも2週間分の食品を家庭にストックすることをすすめています。 一般的な目安の「3日分から1週間分」より、はっきり長く取ってあります。

これは家庭備蓄の推奨で、避難のために2週間分すべてを持ち運ぶという意味ではありません。また、2週間分あれば必ず足りるという保証でもありません。まず可能な分から、家族が食べられる食品を少しずつ増やしてください。

2週間分を置く場所も、お金もない、と思ったとき

とはいえ、2週間分の非常食を積み上げるのは現実的ではありません。ここで農林水産省がすすめているのが、ローリングストックです。

普段使う食品を少し多めに買い置きし、古いものから食べて、食べたぶんを買い足す。 農林水産省は、いつもの主菜・副菜でこれを行えば、買い置きのスペースを少し増やすだけで、費用・時間の面でも普段の買い物の範囲でストックできると説明しています。非常食を別に一式そろえるより、取り入れやすい方法です。

ただし、予算や収納、家族の人数には差があります。無理のない量から増やしてください。常温で置いておくものには、常温保存ができる食品を選んでください。

アレルギー対応食品は「非常食」として売られている数が特に少ないぶん、ふだん食べ慣れているものをそのまま在庫にできるこの方法と相性がいい、とも言えます。食べ慣れていることは、災害時にはそれ自体が利点です。

表示のルールは、この数年で変わっています

もうひとつ、見落とされやすい点があります。

容器包装された加工食品には、アレルギーの表示が義務づけられているものがあり、これを「特定原材料」といいます。長いあいだ、卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かにの7つでした。数年前に備蓄リストを作った方の頭にあるのも、たいていこの7つだと思います。

ところが、消費者庁の案内によれば、その後2回増えています。

  • 2023年3月9日、くるみが特定原材料に追加されました
  • 2026年4月1日、カシューナッツが特定原材料に追加されました

つまり、以前は表示の義務がなかったものが、いまは義務の側に移り、特定原材料は現在9品目になっています。特定原材料は、専門の医師を対象におおむね3年ごとに行われる全国実態調査の症例数や重篤度をふまえて定められている、と消費者庁は説明しています。ルールが動く前提の仕組み、ということです。

ただし、カシューナッツの追加には2028年3月31日までの経過措置があり、旧ルールの表示のままの食品が棚に残っている場合があります。備蓄は長く置くものなので、なおさらです。

そして、ここがいちばん大事なところです。表示がないことだけを理由に、原因となる食物が含まれていない、自分は食べられる、と判断しないでください。 表示の義務がある特定原材料は9品目で、すべての食物アレルギーの原因が義務表示の対象になっているわけではありません(このほかに、表示がすすめられている品目があります)。意図しない混入が起こることもあり、表示の義務がかからない提供のしかたもあります。

木の実類のアレルギーがあるご家庭では、買い置きの棚をひととおり見直す機会になります。購入・補充のたびに原材料とアレルギー表示を確かめ、分からない点は製造元に問い合わせてください。避けるべき食物については、かかりつけの医師の指示に従ってください。

避難所の食事は、中身が分からないことがあります

避難所や配給で出る食事は、その場で用意されたものだと、原材料の表示が手元にないことがあります。聞ける相手がいるとはかぎりませんし、聞いても分からない場合もあります。

避難先では、食物アレルギーがあることを受付や食事の担当者に伝え、原材料や調理のときの混入について確認してください。中身が分からない食事を、表示がないという理由だけで食べられると自己判断しないでください。

そのうえで、家に置いてある「これなら食べられると分かっているもの」が、そのまま安心の量になります。持ち出し袋にも、数食分だけ同じ考えで入れておくと、移動した先で困りにくくなります。

今日できること

棚を全部入れ替える必要はありません。今日やることは、ひとつで十分です。

いま家にある「食べられると分かっているもの」が、何日分あるかを数えてみる。 3日分なのか、1週間分なのか。数えてみて足りないと感じたら、次の買い物から少しずつ多めにしていけば、それがローリングストックの始まりです。

なお、食物アレルギーの診断や、何を避けるべきかの判断は、かかりつけの医師にご相談ください。この記事は、備蓄の量と考え方についての案内です。


出典

  • 農林水産省 家庭備蓄ポータル「アレルギーの方こそローリングストック!」(災害等が起こると食物アレルギー対応食品を含む特殊食品は手に入りにくくなること、食事に配慮が必要な方には少なくとも2週間分の食品を家庭にストックすることをすすめていること、いつもの主菜・副菜をローリングストックすれば買い置きのスペースを少し増やすだけで費用・時間の面で普段の買い物の範囲でストックできること、アレルギー特定原材料7品目として卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かにを挙げていること。2026年9月18日 確認) アレルギーの方こそローリングストック!
  • 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」掲載ページ(一般版〈平成31年3月〉と、乳幼児・高齢者・慢性疾患・食物アレルギーの方などを対象とした「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」〈令和8年9月〉を公開していることを確認。掲載案内のみの確認で、PDF本体は通読していません。2026年9月18日 確認) 災害時に備えた食品ストックガイド
  • 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(容器包装された加工食品について特定原材料を含む旨の表示を義務づけていること、特定原材料はおおむね3年ごとに実施する全国のアレルギー専門医を対象とした全国実態調査における症例数や重篤度をふまえて定めていること、2023年3月9日に特定原材料としてくるみを追加したこと、2026年4月1日に特定原材料としてカシューナッツを追加したこと。2026年9月18日 確認) 食物アレルギー表示に関する情報
  • 郡山市「食物アレルギー表示として『カシューナッツ』が義務化、『ピスタチオ』が表示推奨品目となりました」(カシューナッツの追加について令和10〈2028〉年3月31日までの経過措置期間が定められていることを確認。なお、根拠にあたる消費者庁の令和8年4月1日事務連絡PDFは、こちらの道具では本文を文字として取り出せず、経過措置の期日は本ページで確認しました。2026年9月18日 確認) 食物アレルギー表示として『カシューナッツ』が義…