防災の備えというと、水や食料、非常持ち出し袋を思い浮かべます。火災への備えには、住宅用火災警報器などで早く気づく備えと、日ごろの点検で火災の起こりやすさを減らす備えの両方があります。

見えにくい場所のプラグやコンセントも、火災を防ぐための点検対象です。とくに家具の裏は、ほこりがたまりやすく、ふだん確認しにくい場所です。

刃と刃のあいだに、ほこりがたまる

東京消防庁は、トラッキング現象をこう説明しています。

コンセントに差したプラグの刃と刃の間についたほこりが、湿気を帯びることで電気回路を形成し、放電による火花が発生して、出火する現象のこと

製品評価技術基盤機構(ナイト)は、この現象の再現実験の映像を公開しています。プラグの周辺にほこりや水分が付くと、刃のあいだに電流が流れ、火花放電をくり返すうちに焦げた部分が電気を通すようになり、出火する——という流れです。この映像は専門家が行った実験で、実験条件のもとで開始から33秒の時点に発火が確認できます。これは家庭での発火までの時間を示すものではありません。大変危険なので、ほこりや水分を付けて確かめることは絶対にしないでください。

家電を運転していないときでも、プラグをコンセントに差したままにしていれば、刃のあいだにたまったほこりと湿気によってトラッキング現象が起こることがあります。冷蔵庫の裏、テレビ台の裏、洗濯機のうしろは、ふだん見えにくい場所の例です。水気の多さも、動かしやすさも場所ごとに違うので、点検のしかたは機器の取扱説明書と設置条件を優先してください。

東京消防庁の掲載値では、令和6年が過去10年で最多

東京消防庁の掲載ページでは、電気コード等を出火原因とする住宅火災が令和6年に488件発生し、同ページが示す過去10年で最多だったと説明しています。原因の内訳は「電線が短絡する」「金属の接触部が過熱する」「トラッキング」の順に多い、とも書かれています。

なお、この488件がどの範囲を集計したものかは、ページの本文には書かれていませんでした。全国の件数としては扱わないでください。

火事の原因というと、たばこやコンロを思い浮かべます。総務省消防庁の検討会資料は、電気器具類を原因とする住宅火災を「近年増加傾向」と位置づけたうえで行われた調査です。ただしこの調査は、札幌市消防局・東京消防庁・大阪市消防局・神戸市消防局の4消防本部の管轄地域で起きた火災を対象に、各製品等について直近の20件または直近3年分を調べたもので、資料自体が「全国の火災統計の傾向とは一致しない可能性がある」と注意しています。全国統計ではありませんが、出火の要因を「使用方法不適」「維持管理不適」「機器不良」などに整理したうえで、使い方や手入れに関係する事例について、要因に応じた注意喚起が必要だとまとめています。

東京消防庁が挙げている7つ

同じページには、心がけることが7つ並んでいます。買い足すものはひとつもありません。

  • ほこりがたまらないように、特に隠れているところの差し込みプラグに注意し、定期的に掃除する
  • 差し込みプラグを抜くときは、コードではなくプラグ本体を持って抜く
  • コードの折れ曲がり、家具等の下敷きに注意する。束ねての使用はしない
  • テーブルタップは、決められた容量内で使用する
  • プラグはコンセントにしっかり差し込む
  • プラグ・コンセントは変形等がないか定期的に点検する
  • 外出時や就寝時などは、使わないプラグはコンセントから抜いておく

「束ねて使わない」と「容量内で使う」は、見落とされやすいところです。コードは束ねたまま使用せず、テーブルタップは本体表示や取扱説明書に書かれた定格容量を超えないようにします。消費電力の大きい家電をつなぐときは、家電と配線器具の両方の説明書を確認してください。

今日は、1か所だけでいい

全部いっぺんにやろうとすると、たいてい終わりません。今日は、家具の裏のコンセントを1か所だけ見る。 それで十分です。無理に家具を動かさず、安全に見える範囲を確認してください。

まず機器の運転を止め、手が乾いていることを確かめます。安全に手が届く場合だけ、コードではなくプラグ本体を持って抜き、刃のあいだに黒い筋や焦げがないかを見ます。ほこりがあれば、乾いた布で拭き取ります。水分を付けたり、差し込み口へ物を入れたり、自分で分解・修理したりしないでください。

焦げ跡、変形、緩み、異常な熱、火花、焦げ臭いにおいがある場合は、差し直して使わず、可能なら安全に使用を中止してください。家電やプラグの異常は販売店・メーカーへ、壁のコンセントの異常は管理会社や電気工事店等へ相談します。

重い家具や家電は一人で動かさないでください。見えない場所は無理に手を入れず、家族や管理会社、専門業者など、安全に確認できる人へ早めに相談してください。

「差しっぱなしのまま何年も見ていない場所」を1つ減らすことが、この記事のねらいです。日ごろの点検で火災の起こりやすさを減らし、住宅用火災警報器で万一の火災に早く気づけるようにする。どちらも大切です。


出典

  • 東京消防庁「6.コンセントの掃除を心掛けましょう。」(トラッキング現象の定義〈原文「コンセントに差したプラグの刃と刃の間についたほこりが、湿気を帯びることで電気回路を形成し、放電による火花が発生して、出火する現象のこと」〉、電気コード等を出火原因とする住宅火災が令和6年に488件で過去10年最多であること、経過別の順が「電線が短絡する」「金属の接触部が過熱する」「トラッキング」であること、心がけること7項目を確認。件数の集計範囲はページ本文に記載がありませんでした。容量については「テーブルタップは、決められた容量内で使用する。」とあるのみで、具体的なワット数や束ね方と放熱に関する記載はありません。2026年9月11日 確認/2026年9月20日 再確認) 6.コンセントの掃除を心掛けましょう。
  • 独立行政法人製品評価技術基盤機構「コンセント『1.トラッキング現象によるコンセントの発火』」(再現実験映像の解説〈プラグ周辺にほこりや水分が付着し、刃の間に電流が流れ、火花放電をくり返すことで炭化・導電化して出火する〉、および映像の00:33で発火することを確認。同ページには「※専門家が実験を行っております。大変危険ですのでマネしないでください。」との注意書きがあり、33秒はこの実験条件での映像時刻です。2026年9月11日 確認/2026年9月20日 再確認) コンセント『1.トラッキ…よるコンセントの発火』
  • 総務省消防庁「電気器具類を原因とする住宅火災の実態調査の結果」(電気器具類による火災を「使用方法不適」「維持管理不適」「機器不良」に分類していること、使用者へ事例を示して注意喚起する必要があるとの検討内容を確認。調査範囲は「各製品等に起因する火災のうち、直近の20件又は直近3年分(令和2年から令和4年まで)」、調査地域は「本検討部会に参画している4消防本部の管轄地域内で発生した火災(札幌市消防局、東京消防庁、大阪市消防局、神戸市消防局)」で、同資料に「全国の火災統計の傾向とは一致しない可能性がある」との注記があります。2026年9月11日 確認/2026年9月20日 再確認) 電気器具類を原因とする住宅火災の実態調査の結果