防災の記事では、家具を固定しましょう、と繰り返しお伝えしてきました。家具の固定は、室内でのけがを減らすために欠かせません。そのうえで、もう一段下に土台の話があります。家そのものが立っていられるかどうかです。どちらかを選ぶ話ではなく、どちらも地震への備えです。

「昭和56年5月以前」という線

国土交通省は、耐震改修の特設サイトで、こう説明しています。

昭和56(1981)年5月以前に建てられた建物は、新たな耐震基準を満たしておらず、それ以降に建てられた建物と比べると地震に弱いことがわかっています

昭和56年6月から建築基準法の耐震基準が強化されました。同省は、それ以前に建てられた建物を「旧耐震基準」によるものとし、耐震性が不十分なものが多く存在する、と説明しています。

建てられた年は、家の中を見ても分かりません。登記事項証明書、確認済証、検査済証、固定資産税の課税明細など、手元の書類で確認できる場合があります。書類によっては必要な情報が載っていないこともあるので、分からなければ市区町村の建築担当窓口や建物の管理者にご相談ください。賃貸にお住まいの場合は、まず管理者にご確認ください。

倒れると、自分の家だけの話では済まない

同じサイトには、地震による死亡原因の多くは家屋や家具類の倒壊によるものだ、と書かれています。加えて、倒れた家屋が道をふさぎ、避難する人の通行を妨げたり、救助や消火の緊急車両が通れなくなったりすることがある、とも説明されています。

自分の家の耐震性は、自分の命の話であると同時に、その道を通る人の話でもある——ここが、備蓄や家具固定とは少し性質の違うところです。

進め方は、診断から

国土交通省が示している順番は、次のとおりです。まず耐震診断を行い、耐震性が確認できなかった場合に、耐震改修の計画を立て、設計をして、工事に進みます。

診断は建築士などが行い、その結果にもとづいて建築士が設計し、工事業者が改修します。同省は、信用できる専門業者について、お住まいの地方公共団体の窓口で相談するようすすめています。ただし、窓口で案内されたからといって、国や自治体が個々の業者の工事の質を保証するわけではありません。資格、診断の方法、見積もりの内訳、補助制度を使うための登録要件をご自分で確かめ、急がされてもその場で契約しないでください。

賃貸や分譲マンションなど、ご自身が所有者でない住まいでは、耐震診断や改修の相談は所有者・管理者が主体となる場合があります。ご自分で事業者と契約する前に、まず管理者にご確認ください。

費用の目安も示されています。同省は、耐震改修の費用は住宅の古さ・大きさ・構造・工事の方法によって変わるとしたうえで、築50年・2階建て・延べ面積約100平方メートルの木造住宅を改修する場合に224万円ほどかかるモデルケースを挙げています。これは一例で、金額はそれぞれの家で変わります。モデルケースと同じ金額になるとは限らず、診断・設計・工事それぞれの費用や、どこまでが補助の対象になるかは、自治体の窓口と見積もりでご確認ください。

国と地方公共団体には、診断や改修の費用の一部を支援する制度があります。ただし制度は地域によって異なるので、まずはお住まいの市区町村にご相談ください。

「国土交通省の依頼で来ました」には気をつける

ここは、今日いちばんお伝えしたいところです。

国土交通省は、同省を名乗る者が訪問し、住宅の耐震対策に関するアンケートに答えてほしいなどと告げる事案について、情報提供が複数寄せられていると注意を呼びかけています。そのうえで、一般家庭を対象とした戸別訪問によるアンケート調査は行っていないと明記しています。

さらに、悪質なリフォーム工事の被害についても触れ、「国土交通省の依頼を受けて耐震診断を行っている」「住宅の耐震改修が耐震改修促進法によって義務付けられている」などと言われたという問い合わせが寄せられていると説明しています。同省は、直接、個別の住宅・建築物に対する耐震診断や耐震改修は行っていません。

つまり、「国土交通省の依頼」「国土交通省の戸別アンケート」などと名乗る訪問では、その場で個人情報を渡したり契約したりせず、いったんお断りください。相手から示された番号ではなく、市区町村や国土交通省の公式サイトに載っている窓口へご自分で連絡し、制度や事業者名を確かめます。耐震化はお金の動く話なので、急がせてくる相手ほど、間を置く理由があります。

なお、地方公共団体が行っている制度や案内は別にあります。また同省は、不特定多数の方が訪れる大規模な建築物や、避難路の沿道等の一定の建築物については、耐震改修促進法で耐震診断が義務付けられていると説明しています。ご自宅や所有する建物が対象だと言われた場合も、訪問してきた相手の説明だけで判断せず、所管する行政の窓口にご確認ください。

今日できること

工事の検討まで進まなくてかまいません。今日は、わが家がいつ建てられたかを確かめるだけで十分です。

昭和56年5月以前かどうかは、耐震性を考えるときの最初の目安です。ただし、昭和56年6月以降の住宅でも、建築方法、増改築、劣化などによって状態は異なり、建てられた年だけで安全とは判断できません。国土交通省は、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅についても、接合部等の規定が明確化された平成12年以前のものを中心に、接合部等を確認して耐震性を検証する方法(耐震性能検証法)を案内しています。

年代を確かめたら、お住まいの市区町村名と「耐震診断」で調べると、相談窓口や補助制度の案内が見つかることがあります。そこから先は、必要に応じて市区町村の窓口や専門家にご相談ください。

家具の固定は先に進めつつ、建物の年代と相談窓口も今日確認しておく。室内と建物の両方から備えることが大切です。


出典

  • 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」(昭和56年以前に建築された建物が「旧耐震基準」によるもので耐震性が不十分なものが多いこと、まず耐震診断を実施し結果によって耐震改修や建替えを検討するよう案内していること、国と地方公共団体に支援制度があること、同省を名乗る者による戸別訪問アンケートの事案と「住宅の耐震対策に関して、一般家庭を対象とした戸別訪問によるアンケート調査は行っていません」との記載、悪質なリフォーム工事詐欺に関する問い合わせと「直接、個別の住宅・建築物に対する耐震診断や耐震改修を行っていません」との記載、「耐震改修促進法では、不特定多数の方が訪れる『要緊急安全確認大規模建築物』と、避難路の沿道等の『要安全確認計画記載建築物』を対象に耐震診断を義務付けています」との記載を確認。2026年9月12日・2026年9月21日 確認) 住宅・建築物の耐震化について
  • 国土交通省「家族を思う、強い家~大地震に備える耐震改修~」(原文「昭和56(1981)年5月以前に建てられた建物は、新たな耐震基準を満たしておらず、それ以降に建てられた建物と比べると地震に弱いことがわかっています」、地震による死亡原因の多くが家屋や家具類の倒壊によること、倒壊した家屋が道をふさぎ避難や緊急車両の通行を妨げること、耐震診断→耐震改修計画→耐震改修設計→耐震改修工事という進め方、診断は建築士などが行い地方公共団体の窓口で専門業者を相談できること、築50年・2階建て・延べ面積約100平方メートルの木造住宅で224万円ほどかかるモデルケースがあることを確認。2026年9月12日 確認) 家族を思う、強い家~大地震に備える耐震改修~
  • 国土交通省「地震の被害と耐震改修の必要性」(「まずは、お住まいの家が昭和56年6月以降に建てられた家かどうかを調べてみましょう」「新耐震基準で建てられた住宅についても、倒壊等の被害が見られるものもあるので、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅について接合部等を確認することで効率的に耐震性を検証する方法である耐震性能検証を行いましょう」との記載を確認。2026年9月21日 確認) 地震の被害と耐震改修の必要性
  • 国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法の公表について」(平成29年5月16日報道発表。熊本地震で、旧耐震基準の建築物に加え、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅のうち接合部等の規定が明確化された平成12年以前に建築されたものにも倒壊等の被害が見られたこと、平成12年以前に建築された木造住宅を中心に耐震性を検証する方法がとりまとめられたことを確認。2026年9月21日 確認) 新耐震基準の木造住宅の耐…能検証法の公表について