大きな地震のあと、被災地の写真に、建物の玄関先に貼られた色つきの紙が写っていることがあります。

あれは被災建築物応急危険度判定(以下、応急危険度判定)という調査の結果を知らせる標識で、赤には「危険」と書かれています。自分の家に貼られたら、たいていの人はこう思うはずです。「この家は、もうだめなのか」と。

先にお伝えすると、赤い標識は、取り壊しや罹災区分の決定ではありません。ただし、いま建物に入ったり使ったりするのは危険、という警告です。 この2つを、同じ強さで覚えておいてください。

何のための紙か

埼玉県の説明によれば、応急危険度判定は、大地震で被災した建築物について、その後の余震等による倒壊の危険性や、外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定し、人命にかかわる二次的被害を防ぐことを目的としています。

被害の程度を認定して支援内容を決める調査ではありません。建物の損傷や周囲の状況から、余震のあと当面の使用や立入りに危険がないかを判断する調査です。七尾市の案内によれば、隣の家が傾いてきている、ブロック塀が倒れて通行人に危害を及ぼすおそれがある、といった場合には、自分の建物に被害がなくても「危険」と判断されることがあります。

建物の使用の可否を示す標識は、緑(調査済)・黄(要注意)・赤(危険)の3色です。埼玉県の説明には、こうあります。

判定結果は緑(調査済み)・黄(要注意)・赤(危険)の三段階で区分し、建築物の出入り口などの見えやすい場所に設置することで、その建築物の利用者だけでなく付近を通行する歩行者などに対しても安全性の識別ができるようにしています

見えやすい場所に貼るのは、住んでいる人だけのためではありません。前を通る人にも危ないと分かるように、という意味が入っています。塀や外壁が落ちてくる危険は、家の中の人より、道を歩く人に向かうこともあるからです。

なお、広島県の案内によれば、2026年7月から標識の様式が改訂され、建物そのものの標識に加えて、「落下危険物」と「転倒危険物」を知らせる標識(それぞれ黄と赤の2区分)も使われるようになりました。色だけでなく、何についての標識か、何が書かれているかを確かめてください。

「危険」は「全壊」ではない

いちばん誤解が生まれやすいのが、ここです。

内閣府が住家の被害認定について示した資料には、はっきりこう書かれています。

応急危険度判定で「危険」と判定された住家が、必ずしも全壊又は半壊と認定されるとは限らない

同じ資料は、判定の目的が二次被害の防止であることを説明したうえで、こうも述べています。

落下物の除去等、適切な応急措置が講じられれば判定が変更されることもあり得る

落下物の除去など、専門家による適切な応急措置で判定が変わる場合はある、ということです。ただし、住民が自分で屋根や危険な場所に近づいて作業する、という意味ではありません。 赤い標識がある建物には入らず、自治体の判定の窓口や、建築士・施工業者などに相談してください。

応急危険度判定と、罹災証明書のための住家の被害認定は、目的も判定の基準も異なります。赤い標識だけで全壊・半壊や支援の内容が決まるわけではありません。ただし、同じ内閣府の資料には、判定結果やコメントが後の被害認定の参考になる場合があるとも書かれています。

ある震災での内訳

埼玉県が載せている過去の実績を見ると、阪神・淡路大震災では46,610棟が判定され、その内訳は調査済(緑)30,832棟、要注意(黄)9,302棟、危険(赤)6,476棟でした。

これは一つの災害の実績です。色の割合は、災害や地域によって異なります。

貼られたときに、どうするか

赤い標識を見たら、まず中に入らないこと。そして、標識を自己判断で「もう安全だ」とみなさず、書かれている対処方法と、自治体・判定の窓口の案内に従ってください。

標識には、判定の結果に基づく対処方法の説明や、コメントが書かれています。どこが危ないと見たのかが分かるので、修理や片づけを専門家に頼むときにも、そこが出発点になります。

罹災証明書の手続きは、被災した自治体の案内で、申請方法・期限・必要書類を確かめてください。被害の様子を写真に撮る場合も安全がいちばんです。赤い標識の建物や、落ちたり倒れたりするおそれがある場所には入らず、安全な範囲から撮ってください。

今日、確かめておけること

買うものはありません。覚えておくことが1つだけです。

赤い標識は「いま入ると危ない」という警告であり、家の取り壊しや支援の額を決めるものではない。

これを知っているかどうかで、赤い紙を見たときの数日が変わります。警告には従い、そのうえで、あきらめるのは早い、と覚えておいてください。


出典

  • 埼玉県「被災建築物応急危険度判定とは」(応急危険度判定が大地震により被災した建築物について余震等による倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定し人命にかかわる二次的被害を防止することを目的とすること、判定結果を緑〈調査済み〉・黄〈要注意〉・赤〈危険〉の三段階で区分し建築物の出入り口などの見えやすい場所に設置すること、利用者だけでなく付近を通行する歩行者などにも安全性の識別ができるようにしていること、阪神・淡路大震災における判定実績が46,610棟・調査済30,832棟・要注意9,302棟・危険6,476棟であることを確認。2026年9月16日 確認) 被災建築物応急危険度判定とは
  • 内閣府(防災担当)「応急危険度判定と住家の被害認定調査の関係について」(住家被害認定業務の実施体制に関する検討会 第1回 参考資料。応急危険度判定が大規模地震の直後に建築物の倒壊危険性及び建築物の部分の落下の危険性等を判定するものであること、落下物の除去等の適切な応急措置が講じられれば判定が変更されることもあり得ること、応急危険度判定で「危険」と判定された住家が必ずしも全壊又は半壊と認定されるとは限らないこと、応急危険度判定と被害認定は目的・判定基準を異にすること、判定結果及びコメントを被害認定の参考にすることができる場合があることを確認。2026年9月25日 確認) 応急危険度判定と住家の被害認定調査の関係について
  • 広島県「被災建築物応急危険度判定制度について」(赤は建物に立ち入らない、黄は立ち入りに十分注意する、緑は使用可能であることを意味すること、判定ステッカーに対処方法の説明が明示されていること、令和8年〈2026年〉7月からステッカーの様式が改訂され「建築物」「落下危険物」「転倒危険物」の3種類となり、「落下危険物」「転倒危険物」は「危険」「要注意」の2区分であることを確認。2026年9月25日 確認) 被災建築物応急危険度判定制度について
  • 七尾市「応急危険度判定とは?ステッカーの色(赤、黄、緑)の意味は?」(判定が建築物の損傷程度だけでなく周辺を含めた全体的な状況を含めて行われること、隣家の傾斜やブロック塀の転倒のおそれなどで自身の建築物に被害がなくても「危険」と判断される場合があること、赤は立ち入らず、立ち入る場合は住宅会社・工務店・建築士等の専門家に相談して応急措置を行うことを確認。2026年9月25日 確認) 応急危険度判定とは?ステ…赤、黄、緑)の意味は?