秋は、山がいちばん気持ちのいい季節です。紅葉を見に、日帰りで出かける方も多いと思います。
防災の記事はたいてい「家の備え」の話ですが、災害は、出かけた先でも起きます。 出先では、家にある備蓄も、近所の避難所も使えません。持っていったものと、出かける前に調べておいたことが、そのまま手元のすべてになります。
秋の山について、国が「登山者等の備え」としてまとめているものがあります。令和6年版の防災白書です。そのうち、出かける前に家でできることを紹介します。
まず、その山が活火山かどうかを調べる
意外に思われるかもしれませんが、白書が最初に挙げているのは、持ち物ではなく調べものです。
気象庁は、全国111の活火山を対象に噴火警報・予報を発表しています。2026年3月時点では、そのうち51火山を24時間体制で常時観測・監視しています(常時観測火山)。白書はこう書いています。
これから訪れようとする山が活火山であれば、事前にこれらの情報を確認することが大切である
調べ先も決まっています。気象庁の「火山登山者向けの情報提供ページ」です。山の名前が一覧で並んでいて、選ぶとその山の情報が出ます。行き先の山が一覧にあるかを見るだけなら、数分で終わります。
噴火警戒レベルは「警戒が必要な範囲」と行動の目安
一覧で名前が見つかったら、次に出てくるのが噴火警戒レベルという言葉です。
白書によれば、これは火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と住民等が「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標です。気象庁によると、常時観測火山51火山のうち49火山(2026年3月時点)で運用されています。白書に載っている火山の数は公表当時のものなので、出発前には気象庁の現行のページで最新の情報を確かめてください。
大事なのは、これが危険度の点数ではなく、警戒が必要な範囲と、とるべき行動の目安だという点です。立ち入りを一律に許可する表示ではありません。 実際の入山規制や避難指示は自治体などが行い、対象の地域は火山ごとに異なります。最新の噴火警報・予報で警戒範囲を確かめ、自治体、警察、登山道の管理者などが案内する入山規制や通行止めに従ってください。気象庁は、異常が観測されずに噴火する場合もあるとしています。レベル1でも「安全の保証」ではありません。
火山防災マップで噴火時の避難場所を確かめておくことも重要だと白書は書いています。
登山届は、自分のためだけのものではない
2つめは登山届です。ここには、はっきりした理由が書かれています。
御嶽山噴火時には、登山届を提出していない登山者が多かったこともあり、行方不明者の特定に時間を要した
登山届に行程や連絡先があれば、遭難したときの所在の確認や、捜索・救助を早く進める手がかりになります。 白書は、入山時に登山届の提出を徹底することは、自らの命を守るだけでなく、災害時の救助・救出活動全体の迅速化にもつながる、としています。
この経験から、活火山法には登山届の努力義務規定が追加され、オンラインでの提出など、出しやすくする配慮も盛り込まれました。すでにオンライン申請を導入している自治体もあるので、活火山へ登る予定があるときは、その地域の自治体のホームページを見ておくとよい、と案内されています。提出先は地域の自治体や警察などで確かめ、同行者や家族にも計画を伝えておきましょう。
活火山へ登るときに、足しておきたい持ち物
3つめが持ち物です。活火山へ登る場合の備えとして、白書は、噴石などから頭や体を守るヘルメットの携行を挙げています。その理由として、御嶽山噴火の教訓が書かれています。
御嶽山噴火により命を落とした方の多くが、噴石が頭や体に当たったことに伴う外傷性ショックによる「損傷死」であった
このことから、自分の身を守るためにヘルメットを携行することは大切だ、と書かれています。続けて、噴火後は火山灰の細かい粒子が漂って目を開けづらくなるため、降灰対策としてゴーグルやマスク。さらに、火山灰で日の光が届かなくなり周囲が暗くなるおそれがあることから、ヘッドライトも持参するとよい、とあります。
火山に限らない備えとしては、次のものが挙げられています。
雨具、タオル、非常食、飲料水、携帯電話等の通信機器・予備電源、登山地図、コンパスなどの携帯必需品は、火山災害のみならず、予期せぬ事態への備えとして持参することが望ましい
予備電源と紙の地図が並んでいるのは、電池が切れれば地図もアプリも同時に消えるからです。日帰りのつもりの荷物から、いちばん先に抜けやすいところでもあります。
必要な装備は、山、季節、天候、行程、そして自分の体力や技量で変わります。ヘルメットがあれば足りる、というものではありません。行き先の自治体や警察、登山道の管理者の案内も確かめてください。
登っているあいだに気をつけること
白書は、噴気孔や火口周辺のくぼ地などの危険な場所には近づかないこと、異常を発見した場合には下山するとともに、市町村や警察などに速やかに連絡することを挙げています。現地の規制や注意の表示にも従ってください。
登っているあいだも、最新の情報や現地の案内に気を配ります。白書は、登山中に噴火速報が発表されたときや噴火に巻き込まれたときは、近くの山小屋や退避壕(ごう)、岩陰など、頭や体を守れる場所に一時避難することが重要だとしています。ヘルメットは危険をなくすものではなく、噴火警報や入山規制に反して入る理由にもなりません。
今日できること
行き先が決まっているなら、今日まずやることがあります。
気象庁の「火山登山者向けの情報提供ページ」を開いて、行き先の山が活火山かどうかを見る。 該当する場合は、最新の噴火警報・予報、火山防災マップ、自治体などの入山規制を確かめます。
名前が見つからない場合も、それで安全の確認が済んだことにはなりません。山の名前と山域の呼び方が違うこともあります。自治体や登山道の管理者の情報、天気予報、登山道の状況、無理のない行程と必要な装備を確かめてください。出発の当日にも、情報を見直します。
紅葉の山は、身構えて行く場所ではありません。ただ、出かける前の最初の5分は、家にいるうちにしか使えない5分です。
出典
- 内閣府「令和6年版 防災白書」特集1 第1章 第3節「登山者等の備え」(気象庁が常時観測火山について噴火警報・予報〈噴火警戒レベル〉等を発表しており、これから訪れようとする山が活火山であれば事前にこれらの情報を確認することが大切であること、噴火警戒レベルが「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」を5段階に区分する指標であること、火山防災マップで噴火時の避難場所を確認しておくことが重要であること、御嶽山噴火時に登山届を提出していない登山者が多く行方不明者の特定に時間を要したこと、活火山法に登山届の努力義務規定が追加されオンライン提出等の配慮が盛り込まれたこと、御嶽山噴火の犠牲者の多くが噴石による外傷性ショックの「損傷死」であったこと、ヘルメット・ゴーグル・マスク・ヘッドライトの携行、雨具・タオル・非常食・飲料水・通信機器・予備電源・登山地図・コンパスが携帯必需品として挙げられていること、噴気孔や火口周辺のくぼ地に近づかず異常発見時は下山して市町村や警察へ連絡することを確認。2026年9月15日 確認。登山中に噴火速報が発表されたときや噴火に巻き込まれた際は近くの山小屋や退避壕、岩陰など頭や体を守れる場所に一時避難することが重要であることを2026年9月26日 確認) 令和6年版 防災白書
- 気象庁「噴火警報・予報の説明」(気象庁が全国111の活火山を対象に噴火警報・予報を発表していることを確認。2026年9月26日 確認) 噴火警報・予報の説明
- 気象庁「噴火警戒レベルの説明」(噴火警戒レベルが常時観測火山51火山のうち49火山〈令和8年3月現在〉で運用されていること、市町村等の防災機関が入山規制や避難指示等の防災対応をとること、入山規制等の対象地域は火山ごとに定められていること、異常が観測されずに噴火する場合もあることを確認。2026年9月26日 確認) 噴火警戒レベルの説明
- 気象庁「常時観測火山に『中之島』を追加します」(令和8年3月26日に中之島を常時観測火山とし、常時観測火山が50火山から51火山になることを確認。2026年9月26日 確認) 常時観測火山に『中之島』を追加します
- 気象庁「火山登山者向けの情報提供ページ(全国)」(個々の火山ごとに気象庁が発表している火山情報等を閲覧でき、火山名の一覧から選択する形であることを確認。2026年9月15日 確認) 火山登山者向けの情報提供ページ(全国)